vol.04 – Yuko Kotetsu / Berlin

クリエイティヴな方との出会いがきっかけでベルリンへ

Imhereがお届けする、海外で暮らす気になるあの人。vol.04は、アーティストが集まる街、ベルリンでフォトグラファーとして働くYUKO KOTETSUさん。太陽の日差しが心地よい午後、スカイプを通して伝わってくる彼女の経験談。渡独してからフォトグラファーとして活躍するまでの苦労や貴重な経験をベルリンからお届けします。

 

「ベルリンで暮らせば、新しい道が開けるかもしれない!」

 

ベルリンに住んでどのぐらいですか? また、どんな街ですか?

ちょうど3年目になりました。ベルリンは、ヨーロッパでは大きな都市として知られていますが東京と比べるとかなりコンパクト。そして、ヨーロッパの中でも比較的物価が安く、その影響もあってアーティストが集まる街として知られています。特にベルリンは音楽、中でもクラブカルチャーが盛んで、日常生活の中で「職業DJ」という人によく会うし、金曜夜から月曜の朝までクラブにいる人もいます。パンデミック中もドネーション型のストリーミングプラットホームが立ち上がったり、毎晩のようにDJイベントがオンライン中継されたり、クラブカルチャーを支援する活動も多いです。私が旅行で初めてベルリンを訪れたのもクラブカルチャーが好きだったからです。

目の前に写っているのは、シュプレー川とベルリン大聖堂。ベルリンらしい場所。

フォトグラファーとして活動されていますが、渡独のきっかけを教えてください。

初めてベルリンを訪れた時は、正直小さい街だし田舎っぽくてピンとこなかったんです。でも、またベルリンを訪れる機会があり、その時にアートディレクターやクリエイティヴな仕事をしている方と出会い、オフィスへ遊びに行かせてもらったんです。そして、「こういうところで働いているんだ」と単純に興味を持ち、「こういう仕事ってかっこいい」と刺激を受け、ベルリンで暮らせば新しい道が開けるかもしれないと思いました。当時日本でフォトグラファーとして働いていたのですが、仕事が忙しすぎて、自分の中で写真を追求したり、何かに挑戦したりできていなかったんです。今思うとベルリンでの出会いがなかったら、ベルリンが住む場所の候補にも上がっていなかったと思います。

 

日本でもフォトグラファーとして働いていたんですね。

大学3年生の時に、趣味の写真を仕事にしたいと思うようになりました。でも、写真を仕事にするなら商業写真を撮ることが私にとって現実的に思えて。そして、中でもファション写真に興味を持ったので、まずはファッション雑誌がどう世に出ていくのか見ようと思い、出版社で編集アシスタントのアルバイトを始めました。その後、出版社を変えてインターン含めて5年程フォトグラファーとして働きました。

 

写真に興味を持ったきっかけは?

幼い頃、母親の知人の家にインテリアとして飾られていたローライフレックスという古いカメラにすごく興味を持ったのがきっかけです。写真に興味を持ったというより、カメラ(機械)に惹かれました。そして、小学5年生ぐらいの時に念願だったフィルムカメラを買ってもらい、それで遊んでいるうちに写真を撮ることが好きになりました。それもあって今でもデジタルより断然フィルム派です。

 

実際、ベルリンでフォトグラファーとして働いてみてどう?

コネクションってすごく大事だなぁと感じています。ただでさえ街の規模が小さく、その中のファッッション業界なんてすごく狭くて全員が繋がっているので、新規で介入していくのが大変でした。想像していた以上に本当に大変でした。

 

左:音楽スタジオの撮影。好きなジャンルのお仕事ができて嬉しい!右:ロケハン中。下:シューティング中の1枚。

「とにかくいろんなところに足を運び、自分から人に会う機会を作る」

 

何か突破口はありましたか?

ベルリンは、クリエイティヴなことにチャレンジできる街なので、自分のやっていることや、やりたいことを発表する機会が多いんです。例えば、雑誌に自分の作品を送って載せてもらうとか。サブミッションなのでギャラは出ませんが、若手のアーティストだけじゃなくてベテランの方もやっています。今思うと、雑誌に自分の作品を載せてもらったのが最初の突破口だったかもしれません。

 

どうやってフォトグラファーの地位を確立しましたか?

作品を発表する場があれば積極的に参加するようにしたのと、いろんなところに足を運んで人に会う機会を作りました。例えば、セレクトショップで気になるブランドを見つけたら、ブランドへ連絡してアトリエへ遊びに行かせてもらったり。興味があるものに頭から突っ込んでみる感覚です(笑)。これがきっかけで実際につながった人たちもいます。新しいブランドだとアトリエをシェアしている場合も多いので、一人と知り合うとそこからどんどん繋がっていくんですよ。一度入れば流れができるんですが、入るまでに自分のアクティヴレベルを上げていかないといけないのが難しいところです。

 

なるほど、想像しただけでも大変そう。

自分のスタジオを持ったことも大きい変化でした。今5人のフォトグラファーとシェアスタジオを持っているのですが、スタジオというベースができたおかげで、売り込みをするときに「スタジオがあるから一度来てみない?」という風に営業ツールとして使うことで仕事に繋がるようになりました。

 

5人のフォトグラファーとシェアしているスタジオ。

 

そこまで築き上げるのに時間もかかったのでは?

そうですね。ベルリンに来た当初は目先のことしか見えてなかったので、売り上げがないのにスタジオに投資してもいいのかなとか、もう少し稼げるようになったら機材を買おうとか考えていましたが、実際に投資した方が仕事が回って可能性が広がることに気づきました。

 

今はどんな仕事が多いですか?

ファッッションの仕事が多く、ブランドのルックやオンラインコンテンツ用の写真などを撮っています。ただ、コロナの影響で働き方もかなり変わってしまい、以前のように楽しく撮影する機会は減ってしまいました。レタッチ技術を上げることで他の人と差別化ができると思ったのでこの1年間はレタッチを勉強していました。そして、今年に入って少しずつ以前のような流れが戻ってきた感じがします。ファッションの撮影もしつつ、最近ではアーティストのポートレートを撮ることが多くなりました。ファッション以外に広げて行きたい分野だったので嬉しいです。

 

ベルリンでの作品。

 

ベルリン生活3年で学んだことは?

仕事面(写真業界)だと何でも屋にならないこと。聞かれたことに対して(もしできることでも)何でも「できる」と言っていると、自分らしいものがどんどん確率できなくなるんです。特にベルリンはスタンダードなものがなくて、写真のテイストも様々。その中で自分のスタイルを切り開いていくには、得意分野をはっきりさせることが近道だと思います。自分にしかできないことを見つけることが大事。あと、引っ込み思案の私は日本だと「空気を読むべき」と自分を制してしまう場面が多かったのですが、こっちでは遠慮して物分かりがいい人でいようとすると空気のような存在になってしまうので、思ったことや気になることは全部発言するようにしています。

 

ベルリンでの生活も教えてください。大変だったことはありますか?

冬の日照時間が短すぎて気持ちが落ち込みやすいことです。冬は午前10時から午後3時ぐらいまでしか陽がないんです。日中に陽の当たらないスタジオにいると、仕事が終わると既に夜。一日中真っ暗ということもあります。これが結構どよ〜んとしちゃうんです。実際、ドイツでは日照不足は精神的な影響を及ぼすと言われていて、冬の間憂ウツ状態にならないようにサプリを飲む人も多いんですよ。あとは、仕事だけでなく交友関係の中でも、ディスカッションが多いので、自分の意見を発信することに慣れるまで苦労しました。

 

ベルリンでの1枚。

 

逆にいいところは?

夏の間は早朝から夜10時ぐらいまで明るくて最高な街になるんです! みんなで公園へ行ってビールを飲みながら日が沈むまでず〜っと喋るのがベルリンでのスタンダードな過ごし方。外でおしゃべりできて、身も心もオープンでいられる環境です。それから、ベルリン自体の街が大きくないので、自分が街の一員みたいな気持ちでいられるのが好きです。大きい街だとお邪魔している気持ちになるので。

 

移住して日々刺激されることは?

みんなが発信し続けていること。スタイリストやヘアメイクの方みんなが日々アップデートを送ってくるんです。一度会った人や、インスタ見た人、毎日誰かしらから「一緒に何かやる機会があったら連絡してね」という営業メールが届きます。私も見習わなくては、と思います。

 

VISAについても教えてください。フォトグラファーだと何VISA?

初めの1年はワーホリVISAで、期限が切れるタイミングでアーティスト(フリーランス)VISAに切り替えました。ドイツはアーティストVISAが比較的取りやすいと言われているので、切り替えは難しくなかったです(今は以前より厳しくなっていると聞いていますが)。そして、アーティストVISAには職業が記載されているので、私の場合は基本的にフォトグラファー以外の仕事はできません。そして、期限は最大3年間ですが、全員が3年分もらえるわけではなく、面接官の采配で3年間の人もいれば2〜1年間の人もいます。ドイツへ移住を考えている方は、学生、アーティスト、ワーホリVISAが一般的だと思います。

 

左:差し込む光が綺麗だったので。右:物撮り中に何となく撮った1枚。

 

なるほど、現地で切り替えたんですね。

当初は1年以上ベルリンにいる予定はなかったのですが、単純に1年じゃ何もできなかったんです。というのも文化にうまく溶け込めなかったり、思うようにクライアントが取れなかったり、ドイツ語が喋れなかったり。やりたいこと、やれると思っていたことが1年じゃできなかった。そして住むようになってもっと深くベルリンを知りたくなったんです。住み始める前は1年あれば、そこそこ稼げるようになるだろうとか、ドイツ語も結構話せるようになるだろう、なんて思っていたけど文化を知るまでには時間がかかりますね。

 

今後ドイツにアーティストVISAで渡独を考えている人へアドバイスがあれば。

自分の方向性を定めること、芯をしっかり持つことがベルリンでは好まれると思います。あと、ベルリンはVISAが取りやすいということでフリーランスの人から移住先として人気が高いので気軽に来る方も多い(私も気軽に来ちゃった一人なので)と思うのですが、思ったより苦労することがあるので、目的をきちんと持っているといいと思います。

 

ありがとうございました。

 

【プロフィール】

YUKO KOTETSU

フォトグラファー。都内スタジオ勤務を経て2018年春に独立。現在はドイツ・ベルリンを拠点にファッション、ポートレート撮影を手がける傍ら他ジャンルのアーティストとのコラボレーション、自身の作品制作を精力的に行なっている。

Website: yukokotetsu.com

@yukokotetsuInstagram

 

➖➖MEDIA INFORMATION➖➖

>>Im here magazine

2020年、ニューヨーク、ハワイ、イタリア、それぞれの場所を拠点に生活する3人の女性が立ち上げたウェブマガジン。現地のライフスタイルはもちろん、世界各国へ移住した人たちにフォーカスした「気になるあの人」のパーソナルなライフスタイル情報をインタビューを通して自分たちの目線でお届けしています。

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