vol.03 –   Aki Ishikawa / Milan

やりたいことを仕事にするのが一番。ミラノで趣味だった物作りを本格的にスタート

Imhereがお届けする、海外で暮らす気になるあの人。vol.03は、ミラノでレザーブランド、「Favo-Jag-Frihet*」を手がけるAKI ISHIKAWAさん。黒のレザーのみを使い、流行にとらわれることなく、丁寧に物作りをする彼女。春を感じ始めたミラノからブランドのことやイタリアのお話をお届けします。

 

 

「ないなら自分で作ればいい」と思ったのがブランドを立ち上げたきっかけ

 

ミラノで自身のブランドを持って活動してるなんてすごい! ブランドについて教えてください。

「Favo-Jag-Frihet*」というレザーブランドで、FAVO(好きなもの)、JAG(楽しむ)、FRIHET(フリーダム)で、「好きなものを自由に楽しむ」という意味です。造語ですが、発音のアイデアはスウェーデン語で、名前が長いのと発音がしにくいということで、頭文字をとって「FJF」で覚えてもらっています。名前を考えたのは19歳の時で、自分で物作りをするならマーク(ブランド)があった方がいいと思い、自己満で付けました。学生の頃から流行りに乗っかるのが嫌だったり、スタイルを模索するのが好きだったので、みんなと同じものを着るのではなく、髪の色、洋服、なんでも自分の好きなようにしていたんです。でも、批判を受けたこともありました。そんな中で、単純に自分の好きなものを楽しめばいいと思っている人があまりにも少ないと思ったんです。流行はただのマーケティングであって、自分がいいと思うものを着るべきという思いからこの名前を付けました。

レザーで物作りをしようと思ったきっかけは?

何か欲しいものがあると、まず頭の中でどんな色で、どんなデザインで、どのぐらいの大きさなのかイメージするんですが、高校生の頃、そのイメージしたものを探しに行き、どこにも見当たらなかったんです。その時に、「なぜあるかないかもわからないものを探しているのか?」と思って。ないなら自分で作ればいいと思ったのがきっかけです。革靴作りからスタートしたのは、小学生の頃から靴が好きだったということはもあるのですが、身につけるものの中で一番人間の動きに近い立体物である靴が単純に美しいと思い、好きな靴を見ているだけで幸せになれたことがきっかけです。

自分の欲しい一足を、イメージのままに形にしていました。

ブランドの特徴を教えて。

黒のベジタブルタンニンレザーだけを使って、100%ハンドメイドでメンズとレディースのバッグやアクセサリーを作っています。トレンドにあったものではなく、お客さま一人ひとりに合うものを意識していますし、その方がお客様に長く持ってもらえると思っています。また、フルオーダーなので、オーダーを頂いて何度かメールなどでやり取りしてお客様の要望をデザインに落とし込んでいます。

黒を基調に、お客さまが長く使えるお気に入りになれることを願って心を込めて作っています

 

やりたいことでお金を稼ぐことが一番だと思った

 

日本でもレザー小物を作っていたのですか?

18歳の頃から趣味で靴、バッグ、ピアスを作っていましたが、本職は会社員でした。靴とピアスは、友人からリクエストがあれば作って、バッグは自分のものしか作っていませんでした。2019年にミラノへ移住し、本格的にスタートしました。来た当時はイタリアの工房やアトリエに所属して仕事がしたいと思っていたんです。普通に雇われたかったんですよね。でも、在住1年目でアトリエなどに就職することが難しいと気づいたんです。イタリアではコネクションが大事だったり、仮に働けたとしても無給だったり。場所もフィレンツェやボローニャの方がチャンスが多く、ミラノだとアトリエ自体が少ないのが現実です。なので、語学学校へ行きながらお金を稼ぐために、趣味だった物作りを仕事として始めました。やっぱりやりたいことでお金を稼ぐことが一番だと思ったので。

なるほど。海外でブランドを持つ大変さはどんなことですか?

ブランドを大きくしたいと思ったときに現地のイタリア人に買ってもらうのが一番ですよね。そのために、イタリア人に認めてもらうこと、イタリア人の目に触れる場所へ置くことが大変。実は、1年前にミラノのセレクトショップに交渉して、自分の商品を置いてもらったことがあるんですが、オーナーから要望が多くコンセプトが違ってきたので、取引を終了したんです。私のブランドが有名ではないから大口叩くなと思われてしまうかもしれませんが、そこだけは譲りたくなかったんです。イタリアはコネクションの世界なので、ご縁や機会に巡り合うのが難しいと実感しています。

そうだったんですね。そもそもなぜイタリアへ移住しようと思ったのですか?

80%は当時の彼氏がイタリア人だったからです。数年間、日本とイタリアで遠距離恋愛をしていたのです。将来のことを考えたときに、イタリアが革と縁が深かったので、やりたいことをしながら一緒に暮らすためには、私がイタリアへ行く方が良いと思い移住を決めました。それに、昔から好きな革靴はイタリア製かイギリス製のものだったので、行くならレザーに特化した国がよかったんです。レザーの質はもちろんですが、技術面でもイタリアとイギリスは歴史が長いので。彼と別れた今では、全てが自分のための移住であり、いいチャンス(きっかけ)をもらったとポジティヴに思っています。

イタリアで買うイタリアンレザーと日本で買うイタリアンレザーに違いはありますか?

イタリアンレザーという名前がついている革の質は同じですが、価格が全然違う。やっぱりイタリアのレザーは、質もなめし方も素晴らしい。イタリアのレザーというだけで質がいいのに、イタリアにいるとその中から更に選ぶことができるんです。それに、イタリアには、動物から剥がされた「皮」を「革」にする仕事をしている業者がたくさんあるのですが、彼らはビジネスを手広くやっていないので、好意にしている取引先にしか売らない場合があるんです。だからイタリアでしか買えない革もたくさんあると思います。イタリアでは、同じ金額を払って、より上質な革を使うことができるという感覚です。

これから挑戦していきたいことは?

イタリア人に自分の商品を売ること。まずは、SNSを使って拡散して、イタリアで買ってもらえるようにしたいです。あと、学生時代に家庭教師と塾の講師をやっていたこともあり、イタリア人に日本語を教えたり、日本に興味がある人のお手伝いができたらと思っています。せっかくイタリアにいる日本人の1人として誰かの役に立てれば嬉しい。

もうすぐイタリア生活3年目ですが、イタリアに来てから変わったことは?

いっぱいありすぎます(笑)! 例えば、すごく天気がいい、ただそれだけで、イタリア人はポジティブで、「今」を楽しんでいるんです。東京にいたときは、晴れていることにすら気づいてなかったし、このまま忙しく生きていくのかなとストレスを感じることが多かったですが、イタリアに住んでからは、リラックスすることも覚え、些細な幸せに気付くことの大事さにも気づかされました。イタリア人は、リラックスすることがとっても上手なので尊敬しています。

色々ビックリすることも多かったのでは?

イタリア人の食へのこだわりが強すぎることです。これは本当にビックリ(笑)! 例えば、卵とトマトを一緒に料理しないとか、カプチーノは午前11時までしか飲まないとか。イタリアに来た当初は、「日本人って全部混ぜて食べるよね」と言われ、まるで私が食に敬意を払っていないかのように軽蔑されていました(笑)。ご飯の上に何かを乗せる、いわゆる丼ものやオムライスはイタリア人にとって衝撃みたい(笑)。イタリア人には、プリモピアット(炭水化物系)、セコンドピアット(肉・魚料理系)というメニュー構成の概念があるので、これを混ぜて食べるということがビックリだとか。あと、パスタの茹で方に関して全員がプロフェッショナル。万が一、茹で具合がアルデンテじゃなかったりすると「カッツォ」、「マンマミーア」と声に出して言っちゃうくらいです(笑)。本当にイタリア人として恥ずかしいわ、という感覚らしいです。

ミラノで好きな場所は?

センピオーネ公園が大好きで、天気のいい日に散歩します。来ている人みんながリラックスしている雰囲気を出しているので、私も安心できてリラックスできるんです。あと、毎朝お湯の中にレモンの皮とレモン汁を入れたカナリーノという飲み物を飲みながらカカオニブが入った板チョコを食べている時が一番幸せです。イタリアでは、お腹が痛い時とかに、マンマが作ってくれる飲み物なんです。本当はお砂糖入れて飲むらしいんですが、お砂糖入れなくても美味しいですよ。今までイタリア人に教えてもらった飲み物で一番美味しいと思います。

センピオーネ公園。訪れるだけでリラックスできるんです。
レモンの皮とレモン汁を入れたカナリーノという飲み物と、最近お気に入りのカカオニブが入った板チョコ。

  • PROFILE

Craftswoman:Aki Ishikawa(石川亜希)

1987年7月26日、東京生まれ。 日本人の革小物職人。 幼少期より革靴に興味を持ち、自分の理想の革のブーツが探しても見つからなかったことから、革靴作りを始める。大学生になった18歳の頃から、オリジナルの革靴を作り始めた。元彫刻家だった靴職人、白浜奈津子先生に週に8時間程度靴作りを学ぶ。渡伊後、本格的に自らのブランドFavo-Jag-Frihet*を始動。 多くの日本人のお客様よりオーダーを頂き、イタリアより直接お客様のもとへ商品を発送している。

HP:https://favo-jag-frihet.com/

Instagram:https://www.instagram.com/_fjf_favojagfrihet/?hl=ja

ご注文はインスタグラムのDMからお受けしております。

HP / Podcast

LINKTREE:https://linktr.ee/favojagfrihet

Podcastにてイタリア生活で感じたことを話しているので聞いてください。

 

 

【MEDIA INFORMATION】

>>Im here magazine

2020年、ニューヨーク、ハワイ、イタリア、それぞれの場所を拠点に生活する3人の女性が立ち上げたウェブマガジン。現地のライフスタイルはもちろん、世界各国へ移住した人たちにフォーカスした「気になるあの人」のパーソナルなライフスタイル情報をインタビューを通して自分たちの目線でお届けしています。

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