自分自身も成長したいし、子供たちに広い世界があることを知ってほしい
Imhereがお届けする海外で暮らす気になるあの人。vol.16は今年ベルギーのルーバンへ家族で移住し、新しい生活をスタートさせたスタイリストの松井朋香さん。1歳と3歳の2人の子育てに奮闘する彼女のライフスタイルを少しだけ覗かせて頂きました。
「ルーバンは、子育てする環境としてめちゃくちゃ安心」
実際にベルギーに住んで感じることは?
多言語国家で、3カ国語が飛び交うとても不思議な国です。ベルギーは、フランス語とオランダ語とドイツ語。同じ国なのに、電車で30分移動しただけで、挨拶がHallo(オランダ語)からBonjour(フランス語)になるので、半年住んでいてもまだ慣れないです(笑)。ちなみに、私が住んでいるルーバンは、フランダース地域なのでオランダ語圏です。
それは混乱しそうですね。治安はどう?
私が住んでいるフランダース地域はとてもいいと思います。オランダ語圏の人たちは英語も通じるし、優しい人が多い印象です。ブリュッセル地域は物騒なニュースが多く、治安の面では怖いなと思う事があります。その反面、ルーバンという街は子育てする環境としては安心な気がして、治安の良さが決め手となって住むことにしました。ルーバンはとっても小さな街ですが、住みやすいので本当にお勧めです。
子供がいると余計に住居選びは慎重になりますよね。旦那さんの仕事の関係でベルギーに移住したとか。
そうなんです。現地採用なので、いわゆる駐在と言われるような色々用意してもらっている環境ではなく、家族みんなでイチからスタートって感じ。家も自分たちで不動産会社を回って探しました。移住して最初の1ヵ月間は、主人の会社が用意してくれたブリュッセルの家で暮らし、その間に自分たちで仲介業者とやり取りして、数件内見に行き、街の雰囲気の良さと息子の学校までの距離でルーバンに住むことに。
なるほど。
ブリュッセルに住んでいた時に観光がてらあちこち見て回りました。素敵な街だしお店も色々あって生活には困らないと思いましたが、ブリュッセルでのワンオペ2人育児は私にはハードルが高かったです。私自身、海外旅行しかしたことがないので余計にそう感じたのかもしれませんが。ルーバンは有名な大学もあるので、学生が多く、まるで早稲田、高田馬場みたい街(笑)で、安心感がありました。
子供を育てる上で、日本とルーバンでの環境の違いは?
一番は公共交通機関です。日本にいたときは、バスや電車に乗せるときに周りの圧を勝手に感じて「静かにさせなきゃ」と思っていました。でも、ここでは誰も何も気にしないんです。日本では、子供2人を一人でバスに乗せるなんてことは周りの目が気になってできなかったけど、今は人の目を気にしないで子供と生活ができています。さらに、人もすごく温かくて、ベビーカーをバスから下ろす時や電車に乗せる時に手伝ってくれるのが当たり前のような環境です。公園でも使わなくなったお砂場道具を現地の方から頂いたりします。
旦那さんの仕事の都合とは言え、一家で移住することに対しての不安はなかった?
頼れる人がいなかったのが1番きつかったです。日本にいるときはガツガツ働いていて、こっちに来て急に子育て生活になって、このギャップに身体と心が付いていかなくて、最初の方は少しメンタルが弱っていたと思います。まだ小さい子供2人とずっと一緒に生活していると、幸せだけど自分を見失うような感覚になるんですよね。そんなとき日本にいれば、自分の両親や義理の両親が助けてくれるけど、ベルギーではそれができない。テレビ電話で相談はできても、実際手が足りないと感じました。
「チャンスが目の前にあるのに、自分が躊躇するのは良くない」
1人でも大変なのに、子供2人は本当に大変ですよね。
日本で働いて日本の環境にどっぷり浸っていたら、お金の余裕もメンタルも維持できるのはわかっていましたが、子供の将来を考えた時に「海外生活」はきっと良い経験になると思ったんです。そのチャンスが目の前にあるのに、自分が躊躇するのは良くない。だって、望んだときにそのチャンスが必ずあるわけではないから。正直いうと、気持ちが病んでいるとき、子供を連れて日本へ帰ろうと思った時期もあったんですけど、開放的に伸び伸びと育っている子供たちを見ていると、やっぱり来てよかったと思います。
もともと海外で生活してみたかった?
全くなかったです(笑)。もちろん海外生活への憧れはありましたけど、日本にいるときは仕事や目の前のことに必死で、そんな中、子供を産んで、海外へ来て、今は自分がゼロになっちゃったみたいな状態です。それでも、ずっと日本で生活していると見られなかった世界や、味わえなかったことがたくさんあります。日本にいたら保育園に子供を預けて仕事をしたと思うけど、ベルギーに来て、正直しんどいことの方が多いけど良かったと思っています。今は、新しい生活になって一旦リセットするタイミングという感じ。
言葉はどう?
私の住んでいる地域はオランダ語圏ですが、英語が通じるので、困ったときは翻訳アプリを使いながら生活しています。学校のお母さん同士でコミュニケーションをとる時は少し不便を感じることもあるけど、ITが発達したおかげでなんとか生き延びられています(笑)。でも、最近まで言語のことですごく悩んでいました。日本では、英語が話せることが重宝されるけど、ベルギーに来たら英語は話せて当たり前で、プラスアルファ他言語が話せなるのが普通の世界に直面し、子供のことを考えれば考えるほど自分の価値観がすごく変わりました。「4ヵ国語話せるのが普通」と言われたときは流石にびっくりしましたけど(笑)。でも、これから子育てしていく上で、ヨーロッパの生活に触れるのはとてもいい経験だと思っています。もちろん、全部かじった程度にしか話せないという中途半端な人もいるんですよ。だから言語学習って難しいですよね。1つの言語を完璧にこなせないという悩みも出てくるだろうし。でも、ずっと日本で生活していたら味わえなかった感覚だと思っています。
確かに多言語はヨーロッパ特有な気がします。
我が家は、子供をインターに入れているのですが、家では、主人は英語で、私は日本語で子供達と接するようにしています。オランダ語圏だから現地の子供たちはオランダ語を学びますが、将来の事を考え英語環境に身を置かせたいと思いインターにしました。私自身は、人種の違う人に対して話しかけるのも躊躇してしまうレベルなんです。だからこのベルギー生活で自分も変えたいし、子供にもっと広い世界があることを知ってほしいと思っています。今は、息子の学校の先生のサポートのおかげで言語学習について前より少し柔軟な考えができるようになり、価値感が少し変わりました。
日本との育児の違いは?
トイレの話なんですけど、日本ってトイトレってあんまり厳しくないイメージなんですが、こっちは2歳半でクリアしておかないと入れない学校もあるんです。2歳半でトイレができるようになってないとベイビーみたいな感じで扱われ厳しいですね。
「マックのキッズメニューを頼んだらバーガーが付いてなくて失敗」
移住してカルチャーショックはあった?
ブリュッセルでマックのキッズメニューを頼んだ時ですが、日本だとハンバーガーの付け合わせにポテトorナゲットを選ぶじゃないですか。でも、ベルギーはポテトが主食なので、ポテトがメインで、付け合わせにバーガー or ナゲットを選ぶことになるんです。これを知らなくて、オーダーしたらハンバーガーが付いてなくて失敗しましたね(笑)。ベルギーのファストフード店のキッズメニューは大体この選択です。あと、日曜日にお店が閉まることは知っていたんですが、スーパーや洋服屋、IKEAなど、ほとんどのお店が閉まると、正直暇で(笑)。開いているのは、小さなコンビニと飲食店数店舗という感じ。移住当初は、買い物などの用事をまとめて土曜に済まさないといけない生活に慣れませんでした。遊園地や動物園は開いているので、日曜は完全にファミリーデーです。
ということは、日曜はどんなふうに過ごしているの?
マーケットで野菜や果物など息子のお弁当の具材を仕入れて、ゆっくり過ごすことが多いです。お店がどこも空いていないので、昔はゴーストタウンと言われるほど、誰もいなくなっていたらしいのですが、ここ数年で変わりつつあって、毎週末イベントが行われていたりするので、それをみに行ったりしています。
日本人コミュニティはどんな感じ?
これは人によると思いますが、日本人同士のグループラインがあります。私の場合は、移住前に息子の学校の方に日本人の方を紹介してもらい、その方がルーバンの子育てグループラインへ招待してくれました。知り合った子育て中の母親同士を招待し、輪が広がる感じだと思います。それから、インスタのおかげで繋がった人もいます。例えば、#ベルギー在住 という投稿をすると、現地の人からメッセージがきたり、フォローしてくれたり。みんな情報を知りたいからSNS上でフォローし合っています。
なるほど、日本食はどう?
ラーメン屋さんがルーバンやブリュッセルにありますが、日本食レストランがそんなに多くないので、日本の調味料をアジアンスーパーなどで購入して自炊しています。薄切り肉とかが手に入りにくいので、それが大変ですが。物価は高めで、ランチ€20(約3,160円)、ピザ一枚頼んでも€19〜20(約3,002〜3,160円)が目安です。でも、一番びっくりしたのは、おむつ。ベルギーはおむつ(パンパース)がめちゃくちゃ高いです。日本では1パック1,200円ぐらいでしたが、こっちでは€30(約4,740円)です。削減できないところなので衝撃でした。
今後ベルギーでやってみたいことは?
英語だけじゃなくて他の言語も勉強したいですし、渡航前に現地の情報量でもっと知りたかったなと感じることがあるので、自分が感じたものをSNS、YouTubeやインスタなど形に残しておきたいと思っています。あとはヨーロッパの他の国に積極的に訪れたみたいと思います。
ありがとうございました。
【プロフィール】
松井朋香 / Tomoka Matsui >> INSTAGRAM>>@tomoka_matsui
1990年、神奈川県生まれ。約5年間スタイリストアシスタント後、2018年に独立。2023年2月から家族でベルギーのルーバンに移住。2児の母。
➖➖MEDIA INFORMATION➖➖
2020年、ニューヨーク、ハワイ、イタリア、それぞれの場所を拠点に生活する3人の女性が立ち上げたウェブマガジン。現地のライフスタイルはもちろん、世界各国へ移住した人たちにフォーカスした「気になるあの人」のパーソナルなライフスタイル情報をインタビューを通して自分たちの目線でお届けしています。