vol.012 – KAORI DAVIS / MELBOURNE

娘がハッピーでいてくれることが一番。伸び伸びと生活している姿を見ると移住して良かったと思う

Imhereがお届けする、海外で暮らす気になるあの人。vol.12は、オーストラリアのメルボルンへ移住した料理家、デイビス香織さん。自然豊かな環境と気候に恵まれたオーストラリアで、穏やかに暮らし、丁寧に過ぎる彼女の日常。夏の終わりを感じ始めたメルボルンで、日々の暮らしから、国際結婚、子育てについてお届け。

 

「夫婦で住むなら日本がいいけど、子供が育つ環境はオーストラリアがベター」

 

メルボルンに住んでどのぐらい?

2021年の年末に移住してきたばかりなので、まだまだフレッシュ。

 

どんな街に住んでるの?

コーフィールドっていうファミリー層が住む閑静な住宅街で、日英バイリンガル小学校や、駐在員の子供たちが通う日本人学校があるので、日本人がとっても多い街。だから日本人のママさんとすれ違うことも結構あるかな。たったの数ヶ月でわかることは少ないんだけど、親日家の方が多くて、みんなが優しいのが第一印象。

コロナ禍での移住だったから正直、不安もあったけど、優しい人が多くて安心した。それに、メルボルンは、オーストラリアの中でも「ガーデンシティ」って呼ばれるほどなので、本当に緑がたくさんあって落ち着く場所なんだよね。

 

ビクトリア調の古い建物とモダンな建物が混在するメルボルンの街並み。カフェの街でも有名なメルボルンはお洒落なカフェがあちらこちらにあって、とにかくコーヒーが美味しい!

 

「ガーデンシティ」っていいね! 移住したきっかけは?

国際結婚をした以上、いつかは移住もあり得る、って頭の片隅にはあって。できれば娘が小学校に上がるタイミングで移住したいと考えていたらパンデミックが起こって移住どころじゃなくなったので、半分諦めていたんだよね。でも、1年ぐらい前に急に主人が「移住しよう」と言い始めたのがきっかけ。

 

そうだったんだ。日本から学校の手続きとか、なんだか大変そう。

ほとんどの手続きを主人がやってくれたんだけど、大変だったと思う。うちの娘は、父親が英語を話すとはいえ、日本語が強い子だから、ローカルの子が通う公立に入れるか、日本人学校に入れるか迷っていたんだよね。初めから公立に入れるのも酷だと思ったし、主人の実家の近くということもあって、日英バイリンガル小学校に決めたの。ただ、この学校がとても人気で、学区外からの申請は厳しいと聞いていたんだけど、コロナの影響で日本人がたくさん帰国したらしく、その時まだ住居が決まっていなかった私たちでも入れてもらえたの。

 

タイミングだね。

主人はすごく親日家なので、夫婦2人で住むなら日本がいいけど、子供が育つ環境としてはオーストラリアの方がいいと話していたこともあって。というのも、コロナ禍で日々の生活に窮屈さを感じていたんだよね。毎日の生活に満足していたけど、子供のことを考えるとオーストラリアがベターだと思い、1年前に決断。

 

なるほど、確かにオーストラリアは子供にとって環境が良さそう。移住に対して抵抗はなかった?

数年前、メルボルンで出会った日本人夫婦が、「住み心地が良すぎて日本に帰れない」と話していたのがとても印象的で、住みづらいことはないんだろうと思っていたし、ホリデーで訪れる度に娘ののびのびとした姿を見ていたので、メルボルンで生活すること自体に抵抗はなかった。

ただ、娘が英語の環境でやっていけるかなという不安や、自分のキャリアが白紙に戻ってしまうことへのモヤモヤは正直あった。子供が小学校に入るタイミングで、新しいことを始めようと思っていた時に移住することになったので。でも、娘に「こっちでの生活はどう?」って聞くと、「最高だよ、ママ!」って返してくれるので移住して良かったな〜って思う。

 

とにかく公園が至るところに。

 

移住して生活面で変わったことは?

日本では忙しく働いていて今は専業主婦で時間がたっぷりあるってことが大きな違い。移住した当時は、時間がたっぷりあるから何か新しいことにチャレンジしたいと思っていたけど、今はとにかくこのゆったりした時間を満喫したいって思ってる。

 

メルボルン市内から車で1時間ほどの日帰り旅行に人気なワイナリーエリア、ヤラバレー。

 

贅沢な使い方だね。

そうそう、忙しいのが好きだから日本にいるといつも焦っちゃって、頑張っちゃってたけど、こっちにいると頑張らなくていいんだなって思う。例えば、日本にいたときは、ママのニーズに合うように簡単&時短なレシピを提案する側だったから、子供のお弁当に世の中のママがどれだけ苦悩しているか知ってるんだけど、オーストラリア人は他人のことは気にせず、バナナ1個やりんご1個がまるまるお弁当箱に入ってる感じ(笑)。すごくシンプルなお弁当だったりするの。

 

それはシンプル(笑)!!!

みんなが自分の価値観とペースで生きているから、周りの目はそこまで気にしないし、そんなに頑張らなくてもいい環境があるの。みんな違って当たり前みたいな多民族国家という背景も関係してるのかな?

 

子育ての面で違うところはある? 

そもそも「ちゃんとしなくちゃ」という概念がないから、すごくゆる〜く子育てをしている印象。良くも悪くも、他人からどう見られているのかなんて気にしてない気がする。日本との大きな違いは、父親が育児に積極的で、夫婦が半々で子育てをするところ。オーストラリアの小学校は、基本的に保護者の送迎が必要で、日本だと送りも迎えも母親がするパターンが多いけど、こっちはお父さん達の姿もよく見かける。そもそも子育て、家事、食事を女性がやるという感覚がないんだと思う。

 

家族でよく遊びにくる公園。

 

いいことだね。

うん、とってもいいことだよね。例えば、週末ママ友と遊ぶ場合も、日本だとママと子供が来るのがスタンダードだけど、こっちは旦那さんも一緒に来て、ファミリーで遊ぶのがデフォルト。日本のお父さんは忙しいからなかなか子供とコミュニケーションをとる時間が作れないけど、オーストラリアは夕方の4〜5時には仕事が終わるから子供と遊ぶ時間もあるんだよね。そういう環境が整っているからこそできることで、これが大きな違いだと思う。

 

「教育に対する考え方が違うから、お互いを尊重して二人が納得できるように話し合った」

 

国際結婚の場合、子供の教育で気をつけることはある?

ん〜、バックグラウンドに二つの文化を持っていることはラッキーなことだよ、って伝えるようにしてたかな。今の時代は「ミックスルーツ」でイジメにあうことはないと思うけど、もし「ミックスルーツ」が原因で、嫌な思いをすることがあったら、「ミックスルーツ」は悪いことじゃないし、むしろラッキーなことだよ、と言うようにしてる。

 

なるほど!

夫婦間で言うと、そもそも教育に対する考え方が違うから、お互いを尊重して、二人が納得できるような話し合いをするのが大変だった。例えば、子供が生まれてから打つ予防接種。オーストラリア人は予防接種に対してネガティブな方も多くて、打つ、打たないで話し合ったり。

教育面では、日本は知識を得る教育なんだよね。とにかく暗記して、テストの点数を上げることに重点を置いて、考える力や体験を増やすような教育が少ないから、もっと思考力や体験に重きを置ける教育の方がいいんじゃないの? と主人から提案されて話し合ったこともあった。他にも、日本は集団行動をメインに教育が成り立っているから、これは理解し難いと言われたりもしたかな。だから、毎回主人の意見を受け止めて、考えて、二人で話し合う感じ。やっぱり教育って育った環境が違うからすごく難しいって思った。

 

本当だね。

あと、国際結婚している方の中には、ランドセルの必要性について話し合う家庭もあると聞くよ。日本だとランドセルを買うのが当たり前だけど、決して安くないのに6年で使い捨てなのが納得できないとか。日本人だから疑問に思わないことがたくさんあるんだと思う。

夫婦関係も一緒で、今では私も自分の意見を言うようになったけど、昔はあまり言わなかった。「話し合いをしたいのに君は何も話さないから何を考えているのかわからない」って、もう何百と言われた、最初のうちは(笑)。どっちが良い悪い、合ってる間違ってる、ではなく違うんだよね、こればっかりは。

 

本当にそうだね。プロの目線からオーストラリアの食文化についても教えてほしい。

義母にも聞くんだけど、オーストラリア料理っていうのは特になくて。多国籍だからいろんな国の料理が食べられるのが特徴かな。チャイナ街からベトナム街、イタリア街もあるし、ギリシャ料理や、ユダヤ教の方のためのコーシャフードも多い。どこで食べても日本とは違う本格的な料理が味わえるからすごく楽しい。

 

左 オーガニック大国、オーストラリアだけにオーガニック野菜も豊富。ここはお気に入りのショップ。右 美味しいベーカリーやパティスリーも豊富。

 

食材にも困らなそう!

うん、困らない!オーストラリアって物価は高いんだけど、フルーツや乳製品はお手頃だし種類も豊富!ただ、日本食材だけはめちゃめちゃ高い。なんでなんだろう(笑)。アジアングロッサリーで買うと日本の約3倍の値段。ダイソーもあるけどやっぱり3倍。高いけど、基本的な調味料や食材はほとんど揃うから日本人は住みやすいと思う。

 

アジアングロッサリーで韓国や中国の食材が豊富に手に入るのも便利なところ。

 

ハーブとか美味しそう!

美味しい、美味しい!  日本のハーブももちろん美味しいけど、こっちは手に入りやすいし、庭でハーブを育てている人も多いから買わなくても誰かに言えば庭にあったりする(笑)。義母の家の庭がすごく広くてハーブや野菜をたくさん育てていて、私の理想とする庭。緑が豊かだから木には、いちじく、レモン、プラムなんかの果物がなって……。私も夏になったらラベンダーを一面に植えたり、家庭菜園をはじめようと思ってる。

 

ハーブを使った料理。

 

「娘がハッピーでいてくれることがいちばん」

 

移住して良かったことは?

娘の学校がきっかけで移住したので、娘がハッピーでいてくれることが一番。毎日楽しそうに学校へ行って、伸び伸びと生活している姿を見ると良かったなと思う。学校から車で5分ぐらいのところにビーチがあるんだけど、最近は、娘をピックアップしたらそのままビーチへ行って、そこでぼーっとして、夕飯を食べて、夕日を見てから帰ってくるという生活。こういうゆったりした生活は東京ではできなかった。もちろんバタバタする日もあるけど、娘を見てると移住して良かったと思う。

 

家から車で10分のビーチ。

 

逆にネガティブなとこは?

やっぱりサービスの悪さ(笑)。そもそも、日本が良すぎるよね(笑)。業者の時間のルーズさやインフォメーションセンターの適当さ、ちょっとしたサービスの行き届かなさとか、まだ慣れないね(笑)。何かトラブルがあってもここはオーストラリアなんだ、って自分に言い聞かせてる(笑)。

 

日本が良すぎるよね! 今後、始めたいことは?

スポーツを楽しんでいる女性に昔から憧れがあったから生活の中でスポーツを始めたい。オーストラリアだからサーフィンとか。キャリアとしては、ずっと料理に携わることをやってきたから、将来的には、料理教室、ケータリング事業とか考えてるけど、今はバリバリ働くことよりも、焦らずゆっくりできることを見つけていきたいかな。お茶や着物の着付けができるので、日本の文化を広めるために、何か発信できたらいいなとも、考えてるところ。

 

【プロフィール】

KAORI DAVIS / デイビス香織  >>Instagram

オーストラリア人の夫、7歳になる娘との3人家族。料理家としてレシピ提供やフード撮影、ケータリング事業を中心に活動後、料理教室を主宰する。その傍らレシピサイトを運営する企業でコンテンツ制作に携わる。メルボルンへの移住を機に現在は休業中。

 

➖➖MEDIA INFORMATION➖➖

>>Im here magazine

2020年、ニューヨーク、ハワイ、イタリア、それぞれの場所を拠点に生活する3人の女性が立ち上げたウェブマガジン。現地のライフスタイルはもちろん、世界各国へ移住した人たちにフォーカスした「気になるあの人」のパーソナルなライフスタイル情報をインタビューを通して自分たちの目線でお届けしています。

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