イタリア人のおじいちゃんになりたくて
Imhereがお届けする、海外で暮らす気になるあの人。vol.05は、イタリアのサッカーチームACミランの大ファンで、念願だったミラノへの移住を決めた加藤駿さん。今回は、ミラノにあるセンピオーネ公園で、リラックスしながらサッカーへの熱い思いを語っていただきました。
イタリアに住んでどのぐらいですか?また移住のきっかけを教えてください。
2019年11月に来たので、1年半ぐらいです。日本でミラノの日本食レストランの求人を見つけ、オーナーがちょうど日本に戻ってきているということで、日本で面接を受け、採用が決まった状態でミラノへ。ただ、渡航のためのVISAがなかったので、学生VISAを申請して学校へ通いながら働いていました。大学生時代に半年間イタリアに留学していたのですが、その頃から漠然とイタリアに住みたいと思っていたんです。でも、生活していくためには仕事が必要で、留学時代から労働ビザを取るのは簡単ではないと聞いていたので、勉強しながら現地で生活がおくれる保証が必要だと思ったんです。幸い、オーナーが就労ビザのサポートを約束してくれたのでミラノへ移住することに決めました。イタリアに来てからはパンデミックの影響もあり、昨年末に仕事を辞め、今は職探し中です。
なぜイタリア?
人柄やカルチャー、あと食べ物が好きというはもちろんですが、一番はサッカーです。僕自身も子供の頃からサッカーをしていたのですが、その頃からイタリアのチームやイタリアの選手が好きで。そして、好きな選手が一番多く所属していたのが今も応援しているACミランです。ACミランの本拠地だからイタリアがいいし、ミラノじゃないとダメなんです。イタリアとサッカーが好きだからと言って、イタリア内のどこでもいいわけではなく、ミラノなんです。
ACミランを好きになったきっかけは?
幼稚園の頃からサッカーをしていたので、当時から好きではあったのですが、夢中になって試合を観ていたわけではなく、TVでハイライトを見るとか、大きな試合だけ見るとか、それぐらいでした。でも、ちょうど大学生になった頃、勉強に身が入らず、登校もしたくなく、全てがうまくいかなくて病んでいた時期があったんです。そのときに唯一自分の中で楽しめたのがACミランの試合でした。当時の僕にはACミランの試合だけが救いで、彼らのおかげで精神面も安定して、立ち直ることができたと思っています。だから、僕はACミランに救われたんです。
そうだったんですね、ACミランの中で好きな選手は?
一番好きな選手は、フィリッポ・インザーギという選手。今は引退してベネベントというチームの監督をやっています。現役時代は長い間ACミランにいて、自分と同じポジションだったこともあり好きでした。その人がいたのでACミランを好きになったというのもあります。
どんな選手?
めちゃくちゃテクニックがあって上手いわけではないんですが、点取屋。泥臭いというか(笑)。得点を決めた時に、喜びを爆発させるところも見ていて気持ちいいんです。今のチームだと、ズラタン・イブラヒモビッチ選手です。僕がサッカーを見始めた頃からいる選手で、数年ACミランを離れていたのですが、2019年に戻ってきて今年40歳になる選手です。実力もあるし、人間的にも面白くて。彼が戻ってきたのがきっかけで、ACミランが調子良くなった気もします。選手が戻って来る時は必ずメディカルチェックを受けるのですが、ちょうど彼がチェックに行く日に病院の前(ミラノの選手がメディカルチェックに行く病院は決まっているので)で出待ちもしました。30人ぐらいのファンや記者がいて、直接は見れませんでしたが、車越しに見ることができました。
サッカーはKatoさんにとって欠かせないものですね。
僕にとっての一番の喜びは、ACミランが勝つことです。ACミランが勝つと、その日から次の試合までの1週間ずっと幸せな気分でいられるんですよ。逆に負けると1週間ずっと落ち込んでしまうんです。特にイタリア人のおじいちゃんがこんな感じで、試合の勝敗に左右されるんですが、僕はイタリア人のおじいちゃんに憧れていて、将来的にイタリア人のおじいちゃんになるのが目標です。
イタリア人のおじいちゃん?
そうなんです、イタリアに住んでサッカーを観たいというのはもちろんですが、最終的には、イタリアのおじいちゃんになりたいんです。日本のおじいちゃんも可愛いんですよ。でも、特にイタリアのおじいちゃんは表現がすごくダイレクトだと思うんです。自由で、素直で、好きなサッカーチームの勝敗に一喜一憂しながら生活しているようなおじいちゃん。そんなおじいちゃんにちょっとでも近づきたいと思っています。だからイタリア人のおじいちゃんになるのが最終的な目標です。そのために、イタリアでレジデンツァ(住民登録)を申請して、イタリア人になりたいんです。このレジデンツァを取得しておくと、将来的にイタリアの国籍が取れるので。それもあって、少し前にフットボール専用のスタジアムがあるサン・シーロという場所に引っ越しもしました。特にアクセスが良い場所ではないのですが、スタジアムまで徒歩1分なので、僕にとっては聖地なんですよ。
そのためにもレジデンツァはとても大事な手続きですね。どうやって取得するんですか?
今、必要書類を集めている段階なのですが、まず日本の戸籍を取り寄せ、それをイタリア大使館でイタリア語に翻訳してもらい、それを別の場所へ持っていき、正式な証明書としてのスタンプを押してもらわないといけないんです。あとは、家の契約書やパスポートなどと合わせてミラノの市役所で申請し、通ったら警察が実際に住んでいるかをチェックしに家に来て、何もトラブルなく完了すれば、数週間後にレジデンツァが取れる、という感じです。
今後イタリアでやりたいことはありますか?
最終的には、イタリア国籍を取得することです。イタリアに長く住んで、イタリア人としておじいちゃんになる時に生活していたいので、そのためにもレジデンツァは大事な一歩だと思っています。今できることは、レジデンツァを取ることです。あとは、ミラノにもウルトラス(熱狂的なサポーターグループ)みたいな集団がいて、そのウルトラスの一員にもなってみたいです。スタジアムのそれぞれのゾーンの入り口付近が彼らの集合場所になっているんですが、そこで各チームのバスが来るのを待って、発煙筒を焚いたり、旗をあげたり、応援歌を歌ったりして選手の乗ったバスを送り出すんです。ACミランのウルトラスの集合場所がうちのアパートメントの目の前なので、ロックダウンが緩和して来た頃に、みんなが集まっているのを知って、「これは行くしかない」と思い参加しました。みんなでチームのバスが来るのを待って、バスが来たらみんなで駆け寄り、叫んだり歌ったりして選手を送り出しました。そういうことができるのが本当に嬉しいです。これもミラノに住んでいる醍醐味です。
先日、ウルトラスに参加した日。みんなの熱気がすごかった。—今はサッカーも観戦できてすごくいい環境ですね。毎日どんな生活を送っていますか?
平日は学校で、それ以外は勉強してるか、動画を見てるか、料理してるか、普通の生活です。コロナの影響もあって、試合が最近週に1〜2回あるので、試合がある日は、必ずその試合に備えていますね。
というと?
絶対勝って欲しい試合の時は、敵チームの郷土料理を食べるようにしてるんですよ。「食ってやる」という意味の願掛けみたいなものです(笑)。この間はユヴェントスとの試合だったので、ユヴェントスのホームであるトリノの郷土料理、ポルチーニのリゾットとバーニャカウダーと、名物のコーヒーみたいな飲み物を作って食べました。ローマのチームの時は、カルボナーラを作って食べたり(笑)。この願掛けをしているとイタリアのことも知れるので、今では楽しみの一つです。ただ、対インテルとの試合は、ホームが同じミラノなので、やらないんですが(笑)。
スタジアムでのサッカー観戦なんてすごく興味があるのですが、チケットを取るのは難しいですか?
大事な試合でなければチケットは買えるし、席にもよりますけど、そんなに高くないです。観やすくはないですが、一部の席であれば、€20〜30ぐらいです。いい席だと€100ぐらいしますが。僕はTVで見ているように上から全部見渡しながら観戦するのが好きなので、毎回上の方の席から観ていました。前方の席だと選手との距離は近いですが、全体が見渡せなかったりするんです。次のシーズンからスタジアムで観戦できるようになると思うので楽しみです。せっかくスタジアムの目の前に引っ越したのでぜひ応援しに行きたいですね。
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PROFILE
Shun Kato(加藤 駿)
1990年11月27日生まれ、埼玉県出身。サッカーに夢中だった幼少期を経て、2011年頃から本格的にサッカー観戦(特にACミラン)に力を入れるようになる。2013年に大学を休学し、半年間ミラノへ語学留学。大学卒業後は、イタリアに関係する仕事に就きたくてサイゼリヤに入社。そして、2019年に再び渡伊し、日本食の調理補助として従事。パンデミックを経て、最近サッカー観戦と両立できる仕事が見つかり、ますますイタリア生活とサッカー観戦を満喫できる予感。
【MEDIA INFORMATION】
>>Im here magazine
2020年、ニューヨーク、ハワイ、イタリア、それぞれの場所を拠点に生活する3人の女性が立ち上げたウェブマガジン。現地のライフスタイルはもちろん、世界各国へ移住した人たちにフォーカスした「気になるあの人」のパーソナルなライフスタイル情報をインタビューを通して自分たちの目線でお届けしています。